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こんにちは!テツです。
最近、電子帳簿保存法についてよく耳にするようになって、スキャナ保存の制度に興味を持たれた人もいるのではないでしょうか。
今回は、スキャナ保存の基本をまとめたうえで、重要書類と一般書類の保存要件を解説します。
この記事は以下のような人にオススメ!
- スキャナ保存に興味がある人
- スキャナ保存の導入を悩んでいる人
- スキャナ保存の保存要件を知りたい人
スキャナ保存には法律上の要件があり、導入後もその要件を守って運用しなくてはなりません。
したがって、スキャナ保存の要件がわらなければ、導入すべきかの判断もできないわけです。
この記事を読み進めれば、スキャナ保存の要件がわかるようになります。
最後には、スキャナ保存を導入すべきかを判断できるようになるでしょう。
それではどうぞ!
スキャナ保存するには?
スキャナ保存は希望者のみが導入できる制度。税務署の届出も原則不要です。
ただし、スキャナ保存の開始日より前にあった「過去の重要書類」をスキャナ保存したい場合は、あらかじめ税務署への届出が必要となりますので注意してください。
このタイトルでは、スキャナ保存の基本として「スキャナの種類」と「保存できる書類」について解説します。
それでは見ていきましょう。
スキャナの種類
スキャナとは、書面をデジタルデータに変換できる装置のことです。具体的には、以下のような装置があげられます。
装置 | 内容 |
---|---|
スキャナ | 書面を読み取りして画像データに変換できるもの |
複合機 | 書面を読み取りして画像データに変換できるもの |
スマートフォン | 書面を撮影して画像データとして保存できるもの |
デジタルカメラ | 書面を撮影して画像データとして保存できるもの |
上記の装置は「画像データの解像度」や「カラー画像の階調」の基準を満たす装置を使わなくてはなりません。具体的な基準については、重要書類と一般書類の保存要件で解説します。
保存できる書類
スキャナー保存ができる書類は「紙」でやり取りした書類になります。具体的には、以下のような書類がスキャナ保存の対象となります。
重要書類
(資金や物の流れに直結・連動する書類)
一般書類
(資金や物の流れに直結・連動しない書類)
- 契約書
- 領収書
- 預り証
- 借用証書
- 預金通帳
- 小切手
- 約束手形
- 有価証券受渡計算書
- 社債申込書
- 契約の申込書(定型的約款なし)
- 請求書
- 納品書
- 送り状
- 輸出証明書
- 検収書
- 入庫報告書
- 貸物受領証
- 見積書
- 注文書
- 契約の申込書(定型的約款あり)
上記の書類が「重要書類」と「一般書類」に区分されているのは、それぞれに保存要件が定められているためです。詳しくは次のタイトルで解説します。
また、上記に含まれていない「帳簿」や「決算関係書類」は、スキャナ保存の対象外になります。
帳簿や決算関係書類を電子データ保存したい人は、以下の記事で解説しましたのでご覧くださいね!
重要書類と一般書類の保存要件
スキャナ保存の制度では、法律上の保存要件に従って画像データを保存します。画像データは、その内容から「重要書類」と「一般書類」に区分し、それぞれに定められた保存要件に従って保存する必要があります。
このタイトルでは「重要書類」と「一般書類」の保存要件について解説します。
この記事は、税制改正に伴い「令和6年1月1日以降に適用される法令」に基づいて記述しています。
それでは見ていきましょう。
スキャナ保存する期限
この保存要件は、スキャナ保存するまでの期限を定めた要件です。なお、一般書類については、入力期限に制限はありません。
保存要件 | 重要書類 | 一般書類 |
---|---|---|
入力期限の制限 | あり | 随時でOK |
重要書類については、以下のいずれかの方式を採用して画像データを保存します。
早期入力方式
業務処理サイクル方式
書類の授受してから「概ね7営業日以内」にスキャナ保存する
業務処理サイクルの期間の経過後「概ね7営業日以内」にスキャナ保存する
業務処理サイクル方式とは、一般的な経理業務スケジュールである「月締め」に基づいた方式です。
最長で2ヶ月と7営業日以内に入力が義務づけられています。
なお、業務処理サイクル方式を採用するときは、この方式の事務処理規程を定めておく必要があります。
重要書類をスキャナ保存は、上記のいずれかの方式を採用してくださいね!
スキャナの読取り性能
この保存要件は、スキャナの読取性能について定めた要件です。具体的には以下のようなスペックが求められています。
保存要件 | 重要書類 | 一般書類 |
---|---|---|
一定の解像度 | 200dpi以上 | 200doi以上 |
カラー画像 | 24ビットカラー | 白黒階調OK |
スキャナの解像度は、200dpi相当以上が必要です。
カラー画像については、赤色・緑色・青色の階調がそれぞれ256階調以上(24ビットカラー)で読み取る必要があります。なお、一般書類については、白黒階調(グレースケール)でも問題ありません。
スキャナを導入するときは、上記スペックで保存できるものを採用してくださいね!
改ざんを防止する措置
この要件は、スキャナ保存した画像データの改ざん防止を目的にした要件です。具体的には、「タイムスタンプの付与」または「訂正・削除がわかる機能」のどちらかを採用しなくてはなりません。
保存要件 | 重要書類 | 一般書類 |
---|---|---|
タイムスタンプの付与 or 訂正・削除がわかる機能 | 必要 | 必要 |
訂正・削除がわかる機能とは、以下のようなシステムのことです。
- 訂正・削除の履歴が残るシステム
- 訂正・削除ができないシステム
なお、個人事業主向けの会計ソフトの中には、「タイムスタンプの付与」や「訂正・削除がわかる機能」に対応した機種もあります。
これから会計ソフトを導入する人は、電子帳簿等保存法に対応した会計ソフトを使うと安心ですよ!
帳簿との相互関連性の確保
この保存要件は、スキャナ保存した「画像データ」と「帳簿記録」との相互関連性の確保を求めた要件です。なお、一般書類については、この要件は不要になります。
保存要件 | 重要書類 | 一般書類 |
---|---|---|
帳簿との相互関連性の確保 | 必要 | 不要 |
帳簿との相互関連性とは、例えば「伝票番号など」の指定によって、画像データと帳簿記録の関連が確認できるような相互性を言います。
この保存要件を満たす必要があるのは、
資金や物の流れに直結・連動する「重要書類」のみだと覚えておいてください。
ディスプレイ等の備付
この保存要件は、ディスプレイやカラープリンタの備付けを求めた要件です。なお、一般書類の画像データを白黒階調で保存した場合は、カラーでの表示や出力ができなくても問題ありません。
保存要件 | 重要書類 | 一般書類 |
---|---|---|
ディスプレイ等の備付け | 必要 | 白黒階調でOK |
なお、ディスプレイやプリンタは、以下のスペックが求められています。
ディスプレイ
プリンタ
- カラー表示できる画面
- 14インチ以上の画面
- カラー印刷できるもの
- 操作説明書を備付け
スキャナ保存の導入を前提にして、パソコンやプリンタを購入するときは、上記のスペックを満たすものにしよう!
システム概要書等の備付
この保存要件は、スキャナ保存するシステムの使い方がわかるようにするための要件です。システム概要書等を準備しておくことで、税務調査を速やかに行える状況にしておくことが目的になります。
保存要件 | 重要書類 | 一般書類 |
---|---|---|
システム概要書等の備付 | 必要 | 必要 |
具体的なシステム概要書等は、以下のような書類が該当します。
- 仕様書
- 操作説明書など
なお、システム概要書等以外にも、
スキャナ保存する手順や担当部署などを明らかにした書類も備付けることが求められます。
システムの説明書等は捨てずに、いつでも調べられるように備付けておこう!
速やかに出力すること
この保存要件は、画像データを速やかに出力するための要件です。整然・明瞭に出力できる状態にしておくことで、税務調査がスムーズに行える状況にしておくことが目的になります。
保存要件 | 重要書類 | 一般書類 |
---|---|---|
速やかに出力すること | 必要 | 必要 |
なお、画像データを速やかに出力するためには、以下の内容が求められます。
- 整然とした形式(出力時に画像が分割されないこと)
- 書類と同じくらい明瞭であること
- 拡大や縮小して出力できること
- 4ポイントの大きさの文字を認識できること
上記の4つの要件は、スキャナとプリンタなどの機能や設定に関わってきます。
スキャナやプリンタなどを購入する際は、以上の点も踏まえて対応できる機種を選んでくださいね!
データ検索機能の確保
この保存要件は、画像データのアクセスを容易にするための要件です。検索機能を確保しておくことで、税務調査を速やかに行える状況にしておくことが目的になります。
保存要件 | 重要書類 | 一般書類 |
---|---|---|
データ検索機能の確保 | 必要 | 必要 |
具体的に以下のような検索機能が求められています。
- 「取引日付」「取引金額」「取引先」で検索できること
- 上記の項目から任意の組み合わせで検索できること
- 日付や取引金額を範囲指定して検索できること
なお、税務調査の際にダウンロードの求めに応じたときは、上記の➋と➌の検索機能の要件は不要となります。
まとめ:制度の導入は慎重に!
スキャナ保存の要件がわかりましたか?
今回は、スキャナ保存の基本をまとめたうえで、重要書類と一般書類の保存要件を解説してきました。
この記事のポイントとして、保存要件を一覧表にしてまとめますね!
保存要件 | 重要書類 | 一般書類 |
---|---|---|
入力期間の制限 | あり | なし |
一定の解像度による読取り | 必要 | 必要 |
カラー画像による読取り | 必要 | 不要 |
タイムスタンプの付与 or 訂正削除がわかる機能 | 必要 | 必要 |
帳簿との相互関連性の確保 | 必要 | 不要 |
ディスプレイ等の備付け | 必要 | 必要 |
システム説明書等の備付け | 必要 | 必要 |
速やかに出力すること | 必要 | 必要 |
データ検索機能の確保 | 必要 | 必要 |
上記の保存要件一覧表を見て、あらためて難しそうと思った人は安心してください。
電帳法に対応したソフトの導入により、保存要件を満たしながら安心した運用が行えます。
最後に、小規模事業者は、スキャナ保存制度の導入を慎重に判断してください。取引件数が少ないような場合は、今までどおりの書面保存の方が楽できるかもしれません。
スキャナ保存の制度が、そもそも「あなたのビジネス環境」において本当に必要なのか?
今一度、慎重に判断してから導入するようにしてくださいね!